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こころに響く地方都市の風景


こころに届く景色は地方にある。それはなぜなのだろうか?そんな問いかけをした秋である。

今年の秋は、映画関係者の地力を見せつけた秀作が実った。代表例は、高倉健主演、降旗康男監督の『あなたへ』(東宝配給)だろう。スクリーンに写り込む富山、岐阜、平戸(長崎県)などの地方都市の風景。その背景に立ち、言葉を紡ぐ地方に生きる登場人物の声は俳優の身体を通して、見るものの心の奥まで響き込む。地方都市の風景は、そんな浸透力をまだ保ちつづけているのではないか。今回は、そんなことを探ってみたくなった。

「第3のエコカーを選びませんか」。ダイハツ工業(大阪府池田市)が手がけるテレビCM。印象に残っている方も多いだろう。吉岡秀隆、中越典子が演じる若い夫婦が都会暮らしを捨て日本のある島に戻り、家業の造り醤油店のあとを継ぐ。そんなストーリー仕立てのCMである。地方暮らしの足として欠かせぬ車の存在をアピールする一方で、病に倒れた父や若夫婦を温かく見守る人々の姿が島の風景とともに切り取られる。

断片的にインサートされる若夫婦とその周辺の人々との会話。その尺はわずか数秒である。しかし、見るものにとっての時間は数秒ではない。なぜなら、見るものは、脳裏に物語の続きを勝手につくり出しているからである。そして、その物語は、見るものの歴史の断片からつくり出される。そのとき、ゆっくり、そして静かに「人の温かさを思い出すこころのスイッチ」が入るのである。

このCMが「どこか懐かしい」と感じるのは、その映像を通じて喚起されるこころの動きであり、地方都市の風景は、見るもののにそのこころの動きを容易にさせているのではないだろうか。たとえ都会に生まれ、育ったとしても一定の年齢以上の日本人には、人の温かさの記憶が残っている。地方の風景は、その記憶を手繰り寄せる呼び水として作用している。だからこそ、だれが見ても地方の風景から紡ぎだされる秀作の物語は懐かしいのである。

高倉健の『あなたへ』に続き、吉永小百合主演の『北のカナリアたち』(東映配給)が公開された。北海道の北端の離島の物語。地方の風景に重なる名優の演技。今年の秋は、そんな秀作映画を味わうことができる機会に恵まれたことを嬉しく思う。

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