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名設計家のラビリンス。デズモンド・ミュアヘッドのデザイン



Mission Hills Country Club, Rancho Mirage, California / danperry.com

「このゴルフ場を設計した人物は何を考え、何を想ったのだろうか?」

デズモンド・ミュアヘッド(1924年~2002年)

彼の手がけたゴルフ場でプレーをした経験をもつゴルファーのほぼ全てに共通する思いなのではないだろうか?斬新、個性的などという言葉では、説明できない独特の世界観を有するゴルフ場を遺した稀有の設計家を追う。

歌手として活躍する一方で、女子プロゴルフ界の発展に貢献したダイナ・ショア。彼女の尽力で産声をあげた大会の系譜をもつクラフト・ナビスコ選手権。春の訪れを告げ、LPGA(米国)の歴史に名を刻む伝統あるこの大会は、ロサンゼルスから西へ車で2時間ほどのランチョ・ミラージュにあるミッションヒルズ・カントリークラブで行われる。

このゴルフ場の設計を手がけたデズモンド・ミュアヘッドは、イギリス出身でケンブリッジ大(英)、ブリティッシュ・コロンビア大(カナダ)で建築や造園学を学んだ。

このころのミュアヘッドは、アーノルド・パーマーやジャック・ニクラウスら名ゴルファーと組んで仕事をしていた。ニクラウスとのコンビで設計したミュアフィールド・ビレッジ(米国・オハイオ州)は、ゴルフ設計家としての彼の名を世界に知らしめた。

美しく、水と緑が調和した流線型の設計。ニクラウスとのコンビだったゆえに「ミュアヘッドらしさ」は、希薄化しているのかもしれないが、ゴルファーへの多くのものを訴えるには十分なゴルフコースである。

しかし、この後突如、ミュアヘッドはゴルフコース設計の世界から姿を消す。

ストーン・ハーバーゴルフクラブは、10年の空白を経てゴルフコース設計に戻ったころの設計である。10年の歳月は、この設計家をどのように変えたのか?

波のようにうねるアンジュレーションがきついフェアウエイだろうか?大胆に組み入れるウォーター・ハザードだろうか?

それは、表面的なものでしかないだろう。そう言いたくなるのは、彼が日本にその答えの断片を遺しているからだ。

富士クラシック。葛飾北斎の『富嶽三十六景』をイメージしたとされるこのコース。ここでのラウンドは、ほぼ全てのゴルファーに忘れられぬ記憶として残される。改めて紹介するのがはばかれるほどに有名となった17番。ミュアヘッドは、『富嶽三十六景』の代名詞、「神奈川浪裏」を大胆にグリーンのデザインに取り入れている。

しかし、その大胆さの一方で富士クラシックのコース全体のイメージは「地味」である。地味だと感じる理由は、新陽カントリー倶楽部の存在があるからだ。

これでもかとゴルファーに見せつける大胆なレイアウト。視界に飛び込む強烈な印象を刻む「新陽」の各ホール。この強烈なイメージの洗礼を受けると、「富士クラッシック」は地味な印象を受ける。

ミュアヘッドは、なぜこのようなコントラストを描いたのだろうか。答えは「ゴルフ場がどこにあるか」にあると私は思う。

富士山を臨む「富士クラッシク」は、富士山の存在こそが主である。大胆なデザインは平面化させて、3次元的なデザインは富士の存在を前面に出す。視点は遠くの富士から徐々に手前に移るようにする。「地味」なデザインは、そのような仕掛けに基づくものではないか。一方、そのような背景がない「新陽」は、リンクス風バンカーなど立体的なデザインを豊富に入れる。

ミュアヘッドが大切にしたのは、自らのイメージと景色との融合ではないだろうか。そう考えると、この設計家の自己主張の意味が見えてくる。ゴルフ設計家の自己主張。ゴルフ場は、その存在が巨大な造形物であるが故に、周囲の風景と切り離せない宿命をもつ。であるならば周囲の景色とのマッチングは細心の配慮が必要となる。富士と新陽の異なるつくりは、10年の空白の末にたどり着いたこの設計家の境地が凝縮されているように思えてならない。

哲学や心理学にも造詣が深かったされるミュアヘッド。あらゆる要素が溶け込んだ彼の思想が詰まったコースでプレーすることの本当の楽しみは、彼の思考回路に入り込む楽しさなのかもしれない。

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