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日本人が愛したホットドック



Hotdog at Kyoto station / Ari Helminen

オーブンレンジのスイッチを入れた。パンを手にとってふたつに割り、バターをひいた。ソーセージに包丁で刻みをいれる。それからキャベツを切りはじめた。・・・フライパンにバターを溶かし、ソーセージを軽く炒めた。
次に千切りにしたキャベツを放り込んだ。塩と黒コショウ、それにカレー粉をふりかける。キャベツをパンにはさみ、ソーセージを乗せた。オーブンレンジに入れて待った。・・・ころあいをみてパンをとりだし、皿に乗せた。ケチャップとマスタードをスプーンで流し、カウンターに置いた。

惜しまれながら早世した作家、藤原伊織。江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞した藤原の代表作『テロリストのパラソル』の冒頭、主人公であるアル中のバーテンダー島村がやくざの浅井にホットドックを出す一節である。

ホットドックに「炒めたキャベツ」と「カレー粉」を使う。

これを懐かしいと感じるか新鮮と感じるか、あるいは当然のことと感じるかは読者のバックグラウンドにかかっているだろう。
炒めたキャベツとカレー粉を使ってつくるホットドックは、かつての日本の食文化では当たり前のことだったのだ。

「今、どの店でもソーセージにパンを挟んでいるだけ。だからホットドックは自分でつくる」という女性がいた。
50歳代の彼女は、母親が作ってくれたホットドックが一番であり、それには魚肉ソーセージと炒めないキャベツを使うのだという。
彼女にとってホットドックは、まさに家庭の味だったのだ。関西に縁がある方ならば、魚肉ソーセージをつかうホットドックといえば琵琶湖畔に車で店を出す「風月堂」を思いだすことだろう。昔の味を守り続けるうちに、東京のテレビ局が個性的な店として紹介する時代になってしまった。

「うん、うまい」

藤原が書いた「レシピ」に従って、でホットドックを作ってみた。あえて魚肉ソーセージを使って・・・。少し焦げた魚肉ソーセージの食感が心地いい。カレーの風味は食欲を掻き立て、やわらかくなったキャベツは甘みをともなって口の中に広がる。脂身の少ない魚肉は、パンとキャベツと味の歩調を合わせている。やさしい味わいは、刺激を嫌う。トマトの酸味はアクセントでいい。ケチャップは少なめがいいだろう。

確かに、刻んだ玉ねぎとボイルしたソーセージに粒入りマスタードをかけた本家のホットドックはうまいと思う。その一方で、かつての日本人が愛したホットドックも決して捨てたものではない。先の女性の子どもたちは、彼女の作るホットドックが大好きだという。こうした味をなんとか残すてだてはないものか。思いのほかコーヒーとあうこのホットドックを食べながらそう思うのである。

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