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松本清張「点と線」。生命力の源流。

松本清張没後20年にあたった2012年は、多くの作品がドラマ化された。そして、その多くが設定を現代風にアレンジしての製作であった。それは、時代を超える清張作品の「生命力」の証左でもある。清張作品の「生命力」の源流はどこにあるのか。清張の代表作『点と線』(文春文庫ほか)の舞台、福岡市東区香椎の地を通してそれをひも解く。

鹿児島本線で門司方面から行くと、博多につく三つ手前に香椎という小さな駅がある。この駅をおりて山の方に行くと、もとの官幣大社香椎宮、海の方に行くと博多湾を見わたす海岸に出る。 

小さいながらも駅ビルになった現在のJR香椎駅(福岡市東区)。裏手の住宅街を抜けると、藤田寛之プロの母校、福岡県立香椎高校はすぐである。駅前に広がる商店街。『点と線』が旅行雑誌『旅』(2012年休刊)に連載された昭和32年当時とは風景を異にするも、周辺地域の日々の生活を支える役割に変化はない。

松本清張は、駅前の果実店の店主に、××省の官僚、佐山憲一と料理屋の女中「お時」が、連れ立って海岸方向へ歩いていく姿の証言者としての役割を与える。さらに現在は、高架となった数百メートル横を並行して走る西鉄電車の乗客にも同様の証言者とさせている。香椎の海岸で情死体となって発見される、佐山とお時。物語の序盤の重要な場面展開である。

現在のJR香椎駅前の商店街。奥に西鉄電車(貝塚線)の高架が見える。


『点と線』といえば、東京駅13番線プラットフォームでのトリックである。「4分間の空白」は、事件の解明以上に読者に鮮烈な印象を与えた。東京駅13番線プラットフォームは、物語の冒頭、お時が目撃される「日常風景」として描かれる。そして物語は、このJR(物語では国鉄)と西鉄の2つの香椎駅付近の場面へと接続する。

この香椎の地でで松本清張は物語を動かす。捜査に当たった福岡県警の鳥飼刑事が感じた疑問を通じて、お時が殺害されたという事件性の流れを生みださせている。そして読者に再び東京駅13番線プラットフォームに目を移させる構成をとっている。

香椎での場面を間に挟むことで「日常風景」だった東京駅13番線プラットフォームの目撃は、何者かの介入の意図へと変化する。そして「アリバイトリックの舞台」へと昇華するのである。この巧みな構成によって展開される物語は、自然なリズムで作品の世界へ入ることを可能にしている。

佐山とお時の遺体が発見された香椎海岸。対岸は埋め立てられ人工島となっている。

清張作品の魅力は、構成力の高さにある。松本清張は、『点と線』の構成の基本ラインを「アリバイ崩し」に特化させている。それは、強く印象付けられる東京駅のアリバイトリックの「残像」を長く保つ為である。

清張作品に共通するこの高い構成力は、物語の構造解析を可能にする。そのため物語の構成を維持しながら、作品にしたいという映像作家たちの意欲を喚起させた。これまで多くの清張作品が映像化されたことは、そこに理由がある。そしてその理由は、現在の映像作家にも引き継がれている。設定を現代に移植し、私達を楽しませてくれる原動力は、清張作品の高い構成力にあると言える。

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