「地クラブ」使ってますか?
最近、ゴルフ雑誌や新聞でもポツポツとその存在をアピールしている、いわゆる地クラブ。全国各地に点在し、さまざまなバックグラウンドをもつ中小クラブメーカーが、個性的なクラブ、シャフトなどを開発しています。
このような、多彩な商品が供給される体制が整ったのは、ここ数年のこと。どうして、成熟市場といわれる日本のゴルフ用品市場で、生き残っていけているのでしょうか?
今回は、地クラブメーカーの戦略の背景を探っていきます。
▼地クラブメーカーの台頭と2つのキーワード
これまでゴルフクラブのメーカーは、製造から販売までいろいろな高い障壁がありました。ご多聞に漏れず、ゴルフクラブ市場にも大量生産、大量消費のメカニズムが働いていたのです。そのため、国内のメーカーは数社の巨大メーカーが市場をコントロールすることが当たり前だったのでした。
大量生産、大量販売によってくつられるクラブは、結果として市場において最もお客さんが存在する、いわゆるボリュームゾーンにあわせてクラブがつくられることになります。
その結果、巨大メーカー発のクラブは、万人向けの、意地悪く言えば「ありきたり」なクラブに落ち着きがちです。それが市場の求め声の反映である以上、当然の帰結と言えるでしょう。
そこで、既存の巨大メーカーのクラブに満足できないゴルファーのグループが少数ながらも確実に形成されます。
昨今の「地クラブ」メーカーはそのような市場の「か細い」声に耳を傾けて、個性的なクラブを世に出してきました。環境の変化が、その壁を低くしています。キーワードは、OEMとインターネットです。
▼「つくる」「売る」の変化が生み出した地クラブ
まず、ゴルフクラブをつくるためには、前提としてクラブを製造する環境が必要です。しかし、近年は自前の工場を持たずにものづくりが出来る環境が整ってきました。それがOEMです。
製造設備がなくても、アイデアがあれば、製品として形に出来る。この委託生産の広がりは、これまでメーカーとして参入できなかった企業の背中を押すことになりました。
このOEMが「つくる」側の変化だとすると、「売る」側の変化は、やはりインターネット販売でしょう。
インターネットでの買い物が普及することによって、比較的高額商品であるゴルフクラブもネットで買う人が増えました。
特に昨今は、実際にクラブを使用した感想をネットで情報を収集し、購買の判断基準にしている人が多く、そこで納得した人はネットで購入しています。
地クラブメーカーにとって、インターネットで直接、販売できる環境が整ったことは、販売の手間とコストを大きく低減させています。
▼問題は店舗販売の拡大
徐々に広がりが見られている地クラブですが、課題はやはり店舗販売でしょう。実際に手にとって試打したいというゴルファーは多い。
その消費者の切実な声にいかに応えることができるか。地クラブメーカーにとっては、簡単に解決できない問題でもあります。
巨大メーカーと資本力で劣る地クラブメーカーにとって店舗マージンの問題は大きく、棚の確保という点ですでに不利な形勢です。
いかに量販店のバイヤーたちに自社製品をアピールできるかもポイントになるでしょう。
一部のメーカーは、ゴルフ量販店と独自に契約して、クラブを販売する道を探っています。このような地域で独占的に販売する戦略も実際に採られています。
個性的なクラブを選びたい人にとっても、地クラブメーカーの奮闘は期待したいところです。