ポストAKB48。紅白初出場までの戦略。
時代の流れという厳しく、そして激しく変化する環境を生き抜くために必要なものは「戦略」である。アイドルグループとて、それは例外ではない。
第63回NHK紅白歌合戦にポストAKB48と目されてきた女性アイドル2グループ、「ももいろクローバーZ」(ももクロ)と「SKE48」(SKE)が紅白初出場を果たす。「ももクロ」と「SKE」には、それぞれ独自の成功戦略があった。今回は、それを読み解く。
ももいろクローバーZ~認知の壁を破れ!~
5人のメンバーが「ふとっちょのマネージャー」と呼ぶ川上アキラ氏。ももクロの司令塔である。かつては、女優の沢尻エリカ氏のマネージャーだった川上氏。畑違いのアイドル育成を独自のセンスで切り開いてきた。彼が腐心したのが、いかに「ももクロ」を認知してもらうかである。
ネクタイを頭に巻いたスーツ姿。アイドルとは思えない奇抜さ。川上氏は、ももクロを認知してもらうためのさまざまな仕掛けを用意している。メンバーそれぞれに割り振られた色(リーダー、百田夏菜子は赤など)もその一例である。また、デビューまでじっくり時間をかけたことも異例だ。大手芸能事務所所属にも関わらず、メンバーに路上ライブや全国の家電量販店まわる無料公演を課すなど厳しい下積みを経験をさせたのだ。
ももクロの戦略は、地上戦というにふさわしい地道なもので、遠回りしているの一面もある。しかし、その間に育ったメンバーのプロ意識や磨き上げた歌やダンスの技術こそがこのグループの強みである。その強みこそがデビュー後の認知の壁を越える最大の武器になったのだ。多彩な認知戦略と真の実力。その相乗効果が、紅白出場を手繰り寄せたのだといえる。
ももいろクローバーZ
2008年結成。初期の流動的なメンバー構成を経て、百田夏菜子、早見あかり、玉井詩織、佐々木彩夏、有安杏果、高城れにの6人でももいろクローバーとして活動。2010年「行くぜっ!怪盗少女」でCDデビュー。激しいダンスパフォーマンスや風変わりの振り付けで男女問わず人気を獲得。2011年、早見あかりの脱退を機にももいろクロバーZに改称した。
SKE48~セグメントを使い分ける!~
ファンとの接点を増やす劇場公演の開催、握手会の実施、実力主義の徹底などAKB48の成功ノウハウを投入し比較的順調に成長したSKE48。その戦略は、空中戦と呼ぶにふさわしい。その一方で、SKEとして蓄積したノウハウがあった。
SKEには、2つの顔がある。ひとつは全国区のアイドルグループとしての顔、もうひとつは地方アイドルとして顔である。独自コンテツン作成に力を入れている地方の放送局にとって全国的な知名度のあるアイドルグループが地元に存在しているメリットは大きい。SKEは、頭角を現すとほどなく名古屋のテレビ局に欠かせぬ存在になった。
SKEは、全国ネットのテレビ番組に登場するときは、松井珠理奈、松井玲奈の絶対的エースを前面に出し、名古屋では地元での知名度を活かして多彩なメンバーを番組に出している。発展途上でもテレビ出演が可能となっている環境は、東京に拠点を置くAKB48では難しいある意味贅沢なメディア戦略である。
市場をうまくセグメントし、全国と東海エリアという2つの市場に合わせて活動する複眼戦略によってSKEは、実力を蓄えるチャンスを得た。地方を拠点とするメリットを最大限活かしたが効率的な戦略。それが紅白初出場の一因となったのである。
SKE48
AKB48全国展開の最初のグループとして2008年に結成。名古屋市を拠点に活動。AKB48同様にメンバーは、それぞれ3つあるチーム(チームS、チームKⅡ、チームE)に所属し、CDをリリースする際は選抜メンバーを編成する。2009年、「強き者よ」でCDデビュー。2011年、「バンザイVenus」がオリコンで1位を獲得。松井珠理奈、松井玲奈は、AKB48グループの総選挙(2012年)でトップ10入りを果たしている。