
かつて日本のゴルフ市場の主だった「HONMA」。ウッド加工の高い技術力で築いた高いブランド力。だからこそ最後まで「パーシモン」にこだわり、それが新しい時代への適応への遅れを招くという皮肉。その後の迷走を経て、新しい体制で再出発した「HONMA」。しかし、混乱を経ても残った考え方がある。それは、「ゴルファーの進化を信じる」という思想だ。
HONMA Perfect Switch シリーズは、国内製品初のライ角、フェース角、ロフト角の調整機能を標準装備した、先進性の高いドライバーだ。角度を調整してもシャフトの向きが変わらないように工夫した技術力は、たしかに「HONMA」らしいのだが、それ以上に「HONMA」らしさを感じるのは、スペックの基準だ。同シリーズのローエンド向け「460」、アベレージ向け「440」、ハイエンド向け「390」のいずれもスペックが他社の基準より厳しい設定だ。なかでもハイエンド向け「390」の仕様は、「ハード」の一言に尽きる。ロフト角は9°に絞り込み、重量も329gもある。ボールを上げる技術力とパワー、高いヘッドスピードが求められる。オートマチック感は皆無。しかし、その一方で、短い重心距離と高い操作性はハイエンド層には得がたい魅力になっている。厳しいセッティングはゴルファーの進化を見越しての数字なのだ。
経営権が中国資本に移り、買収当初はネガティブな見方も一部ではされたが新たなスポンサーがついたことで「HONMA」の持つ「こだわりの技術力」を生かせる環境が整ったように思う。Perfect Switch シリーズは「HONMA」の反転攻勢のクラブとしての実力は十分である。

“Real” golfers / redjar
今月は、練習の考え方についての話をしよう。
1月7日、全国高校ラグビー選手権大会で史上5校目となる3連覇を達成した東福岡高校。大会前の練習で恒例となっているのが、あらゆる状況を設定して行われる「想定練習」である。「後半残り10分。5点リード」「後半残り15分。4点ビハインド」というように時間と点差を設定して、実践練習を行う。自主性を重んじる谷崎前監督が練習の狙いとしているのは適切な状況判断能力の鍛錬である。
ここで考えをまとめておこう。
人間は情報を受けとると、それが行動に反映する生き物であるのだということ。特に精神的なプレッシャーを受ける状況下では、判断力や行動に大きな影響を受ける。
適切な状況判断という点でいえば、ゴルフもまたその能力が問われる競技だ。1番ホールから18番ホールまで、精神状態は、刻々と変化する。であるならば、ゴルフにおいても想定練習の効果は大きいといえる。「前のホールで、+4を叩いた次のホールのドライバー」「フェアウエイセンターからの2打目のアイアン」というように+、-の両面での状況を設定して、メンタル面も組み込んでショットの練習をするのである。状況のイメージや心理状態をできるだけ再現して練習するのだ。そうすると「プレッシャーをうけるとアイアンはショートしやすい」などといった自分独自の課題が見えやすくなる。さらにプレッシャーとの距離感を掴み、一球一球をていねいに打つ、実践的なスキルを身につけることができるだろう。
ちなみに東福岡高校ラグビー部は、遠距離通学生が多い為、練習時間が短い学校としても有名だ。短時間に効果的に練習をするという意味でも想定練習は忙しい毎日を送るアマチュアゴルファーにも適した練習法でもあるのだ。

ゴルフに限らず、何事も基礎が大切。だからゴルフ書籍は基礎の重要性を説くものを選びたい。世界的ティーチングプロ、デビッド・レッドベターの理論書『レッドベターの100パーセント・ゴルフ 』(新潮社)は、その最たるものであろう。グリップの重要性やスイングの型を作り上げることの必要性など基礎を力説する同書は、「ゴルフのスイングは、身体の動きと腕の動きを調和させることが重要」という考え方によって組み立てられている。この理論を同氏は、自ら写真で実演しているが、この写真が本当に美しい。長くじっくり向き合える理論書である。

YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)といえば、やはり「赤」である。
多くの人がYMOのアルバムのジャケットとして思い浮かべる赤い人民服姿の「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」の発表が1979年。坂本龍一作曲の「TECHNOPOLIS(テクノポリス)」、高橋幸宏作曲の「RYDEEN(ライディーン)」が並び立ったアルバムである。
YMOは前年に発表したデビューアルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」で中国とゆかりのある曲を2作品発表している。坂本龍一作曲の「東風(TONG POO )」、高橋幸宏作曲の「中国女(LA FEMME CHINOISE )」。いずれもタイトルはジャン=リュック・ゴダール監督の作品から採られている(作品内容と楽曲は関係がない)。ゴダールは共産主義者として知られており、ベトナム戦争のサイゴン陥落が1975年、毛沢東の没年が1976年である。
1970年代後半は、共産主義という考えそのものが若く、エネルギーを持ち、その将来に可能性を感じた若者に影響を持った時代だったのだろう。YMOの3人が、最新の音響機器だけでなく、時代の空気も作品に取り込んでいたことが興味深い。YMOの作品を見るとアーティストは時代とともに歩み、時代を超越する作品を生み出すものだと痛感させられるのである。